ANOTHER CHARA ROOM15
やっち様のサイトでも、既に公開済みですが、こちらでの掲載許可をメールで
頂きましたので、ここにも掲載させて頂きます。
当サイトで、」「大和×圭介」作品の掲載は、初めてです。
幼馴染みの二人の少年時代のお話、皆様、お楽しみ下さいませ。
「サンシャイン」 作・やっち
「俺、引っ越しするんだ・・・。」
いつもと変わらぬ学校の帰り道。
大和がふと立ち止まると言った。
「えっ?何?」
何の前触れも無く聞かされた言葉に俺は思わず聞き返していた。
「引っ越し・・・するんだ。」
いつもは明るく元気な大和が神妙な面持ちで、同じ言葉を繰り返した。
俺の胸は“ズキン”と痛みだした。
それに何だか息も苦しくなってきた。
幼い頃からずっと一緒だった大和とは兄弟以上にいつも側にいてこれからもずっとずっと一緒に居られると思っていた。
大和が居なくなるなんて例え天地がひっくり返ろうとも一度も考えた事など無かった。
“その大和が居なくなる・・・”
そう考えると怒りにも似た悲しみが襲って来た。
けれど・・・
なのに・・・
まだ幼かった俺にはなんて言っていいのか分からず口から出た言葉はたった一言。
「そっか・・・。」
それから俺達はただ無言で家路に向って歩いて行った。
引っ越しの理由はおおよそ予想は付いていた。
大和にはお父さんが居ない。
不慮の事故で亡くなってしまったのだ。
それから、兄弟の居ない大和はお母さんと2人だけで生きて来た。
けれど、そのお母さんが今度再婚をするらしい。
しかし、大和は反対していた。
誰よりもお父さん子だった大和にとって、事故で亡くなったお父さんこそがたった一人の父親だと思っているのだ。
だから、初めてお母さんの再婚話を大和から聞いた時にはこの再婚話はこのまま流れてしまうんだろうと考えていた。
けれど、大和の口から『引っ越し』するを聞かされ、咄嗟にあの再婚話が進んだのだろうと推測した。
あんなに大和は反対していたのにお母さんが説得したのだろうか?
それとも大和の心に何か変化があったのかは分からない。
もしかしたら子供の俺には計り知る事の出来ない大人の事情と言うやつだろうか。
何とも煮え切らない思いがあるが今、俺の目の前に立ちはだかる大きな問題はそう…
“大和が居なくなる”
と言う事。
けれど、突然聞かされた話に驚くばかりで結局大和に何も言う事が出来なかった。
悔しかった。
悲しかった。
その日の夜はは余りのショックにずっと寝付けずに一晩中ベットの中をごろんごろんと動き回っていた。
なのに・・・
次の日に朝。
いつものように大和の家へ行き、一緒に登校する俺達。
しかし、昨日の暗い表情とは打って変わって大和の表情は明るい。
昨日の衝撃的な告白がまるで嘘のようにいつもと変わらない大和の態度。
いっその事、ウソだったらどんなにいいかと思ったら今朝も母さんから大和が引っ越す事を聞かされたばかりだった。
大和のその態度はただのカラ元気なのか、それとも俺と離れる事が余り淋しくは無いのか?
もし、前者ならもっと俺を頼って色んな事をぶつけて来て欲しいと思うし、後者なら俺一人だけが悩んでいる事に淋しいし、これまでの大和と積み上げて来た想い出が足元から崩れるようで怖いし、むかついても来た。
そんな複雑な心境の俺は大和が話し掛けられても耳を貸す事が出来ず、
「・・・でさ、あのお笑いタレントなんだけど・・・。」
楽しそうに昨日観たTVの話題を振って来る大和を無視して前へとスタスタと歩き出す。
「えっ、おいっ、ちょっと圭介。どうしたんだよ。待てよ、待ってたら!」
そんな俺を大和は必至に追掛けて来たが俺は振り向きもせず、前へ前へと進んで行った。
その日を境に俺は大和を避けるように過ごした。
なるべく大和とは2人きりにならないように。
常に大和以外にも誰かが一緒にいて遊んだりした。
だから、大和の家に行く事もまして、俺の家に大和と2人になる事も避けた。
そのせいで大和はしきりに
「何、怒ってンだよ、圭介。」
と不満を漏らしていた。
でも、俺には大和が居なくなると言う現実が受け止め切れなくて、逃げるように引っ越しまでの残された時間を過ごした。
「大和君、明日、引っ越しちゃうんだね。」
妹の由加里がTVを観ながら俺に話し掛けて来る。
『ああ、知ってるよ。そんな事、今更・・・。』
俺は心の中で相槌を打つ。
「大和君とは物心ついた時からずっと一緒に居たからなんだか淋しいね。」
『当たり前だろ。俺は由加里以上の大和とずっと一緒だったんだから。』
「これからもずっと一緒だって思ってたのに・・・」
『そうとも。俺だってこれからもずっと一緒だって思ったよ、なのに・・・』
俺は悔しくてぐっと唇を噛む。
「っつ!」
強く噛み過ぎたのか、血が滲み口の中に鉄の味が広がる。
「えっ、お兄ちゃん。どうしたの?口…」
唇を切ったのに気付いた由加里は傷に触れようとする。
けれど、そんな由加里の手を振り払い
「何でもねえよ、うるせぇ〜な〜。」
とその場を立ち上がるとそのまま自分の部屋に直行した。
そして、電気も付けずにベットに倒れ込み、枕に顔を押し付けると我慢していた想いが突然、一気に溢れだした。
『大和!行かないでよ!!』
そう、心で何度も叫びながら一晩中、枕を涙で濡らした。
翌朝は案の定、目の周りを腫らしながら家族の前に姿を現わすと一様に驚いていた。
「一体、どうしたの?圭介。」
母さんの心配する言葉に適当に答え、『何でも無い』と告げると朝食もそこそこに家を出た。
『今日で本当にお別れなんだな・・・』
そう実感すると学校まで足取りがとても重かった。
空を見上げると天気は眩しい程に快晴で痛い程に眩しい太陽が降り注いでいた。けれど、俺の心はドンヨリと雲が掛かり、今にも雷を伴った大雨が降り出しそうだった。
教室に入っても授業が始まっても俺の心は落ち着かなかった。何を聞いても上の空。教師の声が遠く微かに聞こえて来るだけ。
今の俺には大和以外の事は何も考えられなかった。
なのに大和のクラスは隣だというのに一歩が踏み出せず行く事が出来なかった。
今日が最後だと分かっていたのに・・・。
そうしている内に放課後が近付いて来た。
きっと今頃、大和はクラスの連中に別れの挨拶でもしているんだろうか。
あの大和でも泣く事はあるんだろうか?
そんな想いを巡らせながら、俺のクラスはいつの間にかホームルームも終わり、担任が去って行くのを見守るとやっぱり我慢出来なかった俺は教室を飛び出した。
「大和は?大和は居る?」
俺は隣のクラスに飛び込んで叫び、クラス中を見回した。
けれど、大和の姿が見当たらない。
「大和ならさっき帰ったぜ。引っ越しの荷物がまだ片付いていないとかって・・・。」
大和のクラスの一人がそう答えると俺は踵を返して走り出した。
「こら〜!!佐倉。廊下を走るんじゃ無い!!」
教師の怒鳴り声など聞こえていなかった。
ただ、廊下を走り、昇降口を飛び出し、校舎を抜け、グランドを駆け抜け、ただ一心不乱に大和の家に向かって走って行った。
『大和、行かないで。ずっと俺の側に居てよ・・・』
準備運動もしないでただひたすら走ったせいか、息も絶え絶え。
でも、大和に自分の気持ちを伝えたくておぼつかなくなる足で必至に走り、やっとの事で大和に家が視界に入って来た。
『あっ、あれは…』
大和の家の前に停まっている一台の大きな車。
荷物を積み終えたのだろうか、引っ越しの作業員が後ろの扉を締めた。
すると大和のお母さんが出て来て作業員に挨拶していた。
その後から大和が姿を現わし、お母さんと共に車に乗り込もうとしていた。
『待って、行かないで…大和…大和…』
苦しくて辛くて声が出ない。
でも、力を振り絞り、喉が切れようとも大声で叫んだ。
「大和!!!」
俺の大声に大和が振り返った。
俺は最後の力を振り絞って大和に駆け寄ると倒れ込むように大和に抱きついた。
「圭介、どうしたんだよ?何をそんなに息を切らせて…。」
俺の身体を受け止めた大和は不思議な物を見るような視線で俺を見ると
「大和、行っちゃヤだ。ずっとずっと、俺の側に居てよ。離れたく無い!!」
縋るように大和の腰に抱きついて俺は叫んでいた。
…いや、叫びながら泣いていた。
しかし、この感動的な涙も今になってはお笑い話になってしまって、何かあると大和はこの事を持ち出しては笑うのだった。
何故って?
それはさ、俺自身も呆れてしまう結末が待っていたからだった。
泣叫び、行かないでと縋ってみせた俺だったがどうやら大きな勘違いをしていたのだ。
大和はお母さんの再婚を期に新しい家族と共に新しい家に住む為に引っ越す事になったのだ。
しかし、引っ越すと言っても同じ学区内。
つまり、家は今まではご近所だったけどちょっと離れたトコに引っ越すだけの事だった。学校も今まで通り。登下校も同じ通学路なので一緒に学校へ行ったり、帰ったりも可能だったのだ。
「ククク…あの時の圭介の切羽詰まった表情。今でも目に焼き付いているぜ。」
何故、そんな話になったのか、大和はまたあの時の話を引っぱりだして俺を笑い者にする。
「何だよ、またその話?もういいじゃねえか。過去だよ過去。」
あの時の勘違いが今でも恥ずかしくて仕方なくて俺は大和から視線を外し、そっぽを向いてむくれた。
「あ〜もう、ごめんって。悪かったよ。怒るなって。」
大和は子供をあやすかのように俺の身体を抱き締め、イイ子イイ子と頭を撫で回して御機嫌を取ろうとする。けど、まだ肩を震わせて笑ってる。
「ふ〜〜〜ンだっ。」
「怒るなってもう・・・。でもさ、何であんな勘違いしたんだ?そういや、俺が引っ越しの話を切り出してからいくら話し掛けようとしても無視して逃げ回ってたよな、お前。アレは何で?」
「だっ、だって…、大和のお袋さんが再婚するって話を知ってたし、大和はお袋さんと一緒に新しい家族の所へ引っ越しすると思ったし…。きっと、何処か遠い所に引っ越すものだとばかり思ってた…から…。だから…淋しくて辛くて、何よりも大和と離れたくないから、大和の口からもう一度引っ越しの話を聞かされるのが怖くて避けてた。でも、あの時、ちゃんと話を聞いておけば良かったって今になって後悔してんだから。そうしたら、大和にあんな醜態・・・」
あの時の事を思い出し、急に恥ずかしくなって頬が熱くなる。すると大和はそっとその赤くなった頬に唇を寄せると軽くキスして来た。
「醜態だなんてそんな……。俺はあの時、滅茶苦茶嬉しかったんだぜ。俺の事、ここまで思ってくれる友達はやっぱり圭介だけだって。あの時、『離れたく無い。ずっと一緒に居たい』って言ってくれたろ。俺も同じ気持ちだったから…。圭介とはず〜っと一緒に居たいって思ってたから、だから、少しでも圭介の側に…って高校入ると同時に圭介の家の近くのマンションを無理矢理親に借りてもらったんだぜ。」
「大和・・・。」
大和の言葉に俺の胸は“キュン”と痛みだした。
あの時と同じように息苦しくなってきた。
でも、あの時とは違う・・そう、とっても嬉しい痛みだった。
「だからさ、もう何があっても離れないよ。いつまでもこうして抱き合える程、ず〜っと側に居るから。何処にも行かない。約束する。」
大和はハッキリした口調で言った。
そして、俺も
「うん。離れないで。ずっと側に居て。いつまでも一緒だよ。」
と答えると永遠の約束を交すように2人の唇が重なった。
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