早乙女さんのお話10
ちょっとずつ書き始めた「早乙女さんのお話」も、ESSAYを含めて、第10話になりました。
GW明けから、雨の日が多めだったので、こんなSSが思い浮かびました。
いつもの私のSSと比べたら、ちょっとだけH度は低めなのは、ホストではなく、プライベートな
恋人同志としての彼らにこだわりたかったので、店内Hでは最後まで至れなかったからです(苦笑)
この物語中の「club DANDY」のバスルームは、マイ設定です(笑)
従業員の身だしなみを気にする職場なら、あるかも・・と勝手に間取りを作ってしまいました・・。
「五月雨」 by ひいろ
爽やかな初夏の風が、頬を撫でる。
だが、それも、束の間の夢のようなひとときだった。
時間があるからと、新緑を見ながら、散歩気分で、のんびりと徒歩出勤していたのが、
間違いだったのか、それとも、予報士ですら、予想が立て辛いのが、この時期の天気なのか。
さっきまで、晴れ渡っていた空は、一気に曇り、突然、降り出した雨に、俺は、慌てて駆け出した。
激しい雨音と共に、ここ数日の晴天続きで、乾燥していた空気が、見る間に湿り気を帯びる。
「うっ・・。」
店まで走ろうとしたが、途中で、一瞬、ズキリと脚の古傷が痛んだ。
ウォーミングアップも無しに、この湿度の中で、走ったのが原因だったらしい。
雨宿りが出来そうな場所を見つけ、痛みが退くまで、そこに腰掛けて休むことにした。
怪我としては随分前に、ほぼ完治した筈だが、こうして雨の日は未だに微かに疼く時もある。
雨の日では、なかったはずなのに、こんな日は、決まって、悦史さんと初めて出逢った日を
思い出すのは、何故なんだろう・・。
あの日の記憶は、今も鮮明に、この胸の中にある。
ジョギング中に店の前で、蹲ってしまった俺を助けてくれたのが、悦史さんだった。
男の俺が見ても見惚れるほどの、計算尽くされた、完璧なルックスと大人の仕草。
あの時は、まだ悦史さんが、苦労知らずで恵まれた人間に見えた。
俺とは、違う世界に生きる人・・。
手当の最中の、半ば強引なclub DANDYへのスカウト話に、つい乗ってしまったのは、
好奇心と、俺のささやかなプライドだったのかもしれない。
そして、俺は、最初から、たぶん悦史さんに惹かれていた・・。
最初は、仕事上の『師弟関係』に過ぎなかった俺たちが、恋人同志になれて、悦史さんが
俺のプロポーズを受けてくれたのは、今でも、まるで奇跡のように感じている。
悦史さんにふさわしい人間になりたくて、ずっと努力もしてるけど、まだまだ俺はガキみたいだ。
仕事では、お互いに女性を抱くことも止むを得ないだけに、嫉妬心も尽きることはない。
本当に俺でいいのか、たまらなく不安になったり、時々、どうしようもなく自己嫌悪で、
落ち込んでしまうこともある。
だけど、いつか、悦史さんを支えて、倒れない男になりたいと、心の底から願っている。
俺にとって、悦史さんは、世界一、大切な人だから・・。
雨は決して嫌いではないし、こうして見ていると、陸の上なのに俺の大好きな水中にいるかのようで、
リラックスした気分でいられる。
なのに、何時になく感傷じみた心境になってしまったのは、この急変した天気のせいだろうか?
脚の痛みは和らいだが、空はまだ、どんよりと厚い雲に覆われ、雨はしばらく止みそうにない。
どうしようかと思案していると、まるで、『あの日』を再現するかのように、急に目の前に人影が現れた。
「こんな所で、雨宿りか?元基。」
耳馴染みのある声に見上げてみると、その人は、ずぶ濡れにも拘わらず、穏やかに微笑んでいた。
「悦史さん!」
「傘は持ってないんだが、たまには、俺と同伴出勤しないか?アキラ。」
先ほどまでの物思いに沈んだ気持ちが、嘘のように晴れ上がっていくのを感じる。
「喜んで!早乙女さん。」
「走るぞ。」
「はいっ!」
雨空の下でも、悦史さんと一緒にいられる幸せを、噛み締めて、店まで駆けた。
二人とも、びしょ濡れのまま、club DANDYには、なんとか辿り着けた。
「おはようございます!」
「おはよう、アキラ。・・早乙女さんも、一緒だったんですか!?」
挨拶を返して来たのは、一足早く出勤していたの、ここでの俺の『先輩』だった。
俺たち二人の『濡れネズミ』な姿を見て、かなり驚いている。
「おはよう。ああ。そこで、アキラを拾って来た。」
「そんなに、外、降ってたんですか?」
「もう、小降りにはなって来てるけどな。お前は、大丈夫だったみたいだな。」
「俺、今日は、結構、早めに出て来たんですよ。そのままじゃ、風邪、ひくんじゃあ・・?」
「時間もなさそうだから、二人でシャワー浴びて来るよ。他の奴らが来たら、伝えておいてくれ。」
悦史さんの一言に、今度は俺が驚かされた。
「え?俺と一緒で良いんですか?早乙女さん。」
「男二人だと狭いかもしれないが・・嫌なのか?アキラ。」
「とんでもない!お伴させて頂きます。」
悦史さんからの、こんな誘いを、俺が断れるはずが無い。
「じゃあ、頼んだぞ。」
「わかりました。」
悦史さんに返答した『先輩』の声を後に、二人で店内に備え付けられているバスルームに向かった。
店のバスルームで、悦史さんと二人きりなのは、初めてかもしれない。俺は、ドキドキしていた。
「それにしても、お前、相当、濡れてるな・・。」
感心したような悦史さんの声に、思わず苦笑が漏れる。
「そうなんです。もう、パンツまで、びしょ濡れ。」
「お互い、災難だったな。だが、あの天気で降るとは、誰も思わないよな。」
「ホント、ホント!」
「さっさと入って、温まろうぜ、アキラ。」
「そうっすね!」
話し掛けながら、悦史さんが、濡れたスーツの上着を脱ぎ難そうに、肩から外していく。
雨は、シャツの中にまで、染み込んでしまっていた。
ところどころ、白いシャツが肌に吸い付くように透けて、そこはかとない色香が漂っている。
悦史さんから、目が離せない。
「・・そんなに、ジロジロ見るな。」
つい、上から下まで、舐め回す様に眺めてしまい、悦史さんに見咎められた。
「ごめん・・そんな風に濡れてる悦史さんも、綺麗だなと思ってさ。」
「店では、早乙女って呼ばなきゃダメだぞ、ア・キ・ラ。」
「すんません・・。でも、ここは、二人きりだから、悦史さんって、呼びたい・・。」
「仕方の無い奴だな・・。」
呆れつつも、何処となく悦史さんは嬉しそうに見える。
「脚、大丈夫か?雨とはいえ、さっきは、走らせて悪かったな。」
先に脱ぎ終えた俺の古傷の痕の上を、悦史さんが労わるように、優しく撫でる。
「気が・・付いてたの?」
「お前の俊足なら、あの場所から、店までは楽に走り切れる距離だからな。
雨の日には、調子が出ないことも、随分前から気が付いてたよ。
あんな場所で休んでいたのは、きっと、古傷が痛んだんだろうと、察しが付いた。」
「・・悦史さんには、敵わないよ。ありがとう。」
「礼を言われるほどのことじゃないよ。」
「・・でも、俺、悦史さんに触られると、ついココも反応しちまう。」
さっきの悦史さんの艶かしい姿態だけで、ヤバイとは思っていた。
セックスの愛撫とは違うものでも、悦史さんが俺に触れてくるだけで、昂ぶってしまう。
悦史さんの顔色が、変わった。
「ここが、何処だか、わかってるのか?」
「悦史さんが、欲しい・・。」
逃げようとする手を引き寄せて、背中から抱き締めて、耳元で囁くと、悦史さんが身を捩った。
「・・止せ・・。これから二人とも仕事だろ?」
首筋に顔を埋め、シャツ越しに濡れた乳首を指で、捏ねる。
「もう、ここ、尖り始めてるね・・。」
「んっ・・。」
唇を噛み締めて、声が漏れないようにしているが、甘い吐息が一層、俺の本能を刺激する。
「こんな悦史さんを見て、平静じゃ、いらんないよ・・。」
手をゆっくりと、腰の辺りまで滑らせて行く。
「こら・・声も・・聞こえるし、ここじゃ無理だ・・。」
「悦史さんだって、感じてる声、出してるじゃない。俺、このままじゃ、もう納まりつかない・・。」
服越しに、硬くなった俺のものを、わざと、悦史さんの双丘の狭間に宛がった。
ベルトとファスナーを緩めた悦史さんのスラックスを、一気に膝下まで下げる。
肩越しに見下ろした悦史さんのものは、少しだけ膨らんで、先端から雫を零していた。
「見るな・・。」
「俺の体温とコレで、感じた?」
「・・違う・・。」
「嘘付いてもダメだよ?悦史さんの、トロトロになってるじゃん・・。」
「あ・・触る・・な・・。」
手を腰の前に廻し、先端から溢れ出るものを掬い取る。
一瞬、俺の指先が敏感な部分を掠めたらしく、悦史さんの顔が朱に染まる。
「悦史さん、もっと俺に、触って欲しそうな顔してる・・。」
「他の・・奴が・・来たら、どう・・するんだ・・?」
「見せ付けてやりたいよ、早乙女さんは、俺のだって・・。」
「そんなことしたら、俺もお前も、ここにいられなくなるぞ。」
「それでも、かまわない。」
「・・どうしたんだ?、元基。お前らしくないぞ?」
「え?」
急に本名で呼ばれて、ドキリと心臓の鼓動が跳ね上がった。
「何かあったのか?」
腕で、頭を引き寄せられ、悦史さんの澄んだ瞳が俺の眼を覗き込む。
「・・参ったな。俺、悦史さんのその眼に弱いんだよ。」
「言ってみな。」
「今日の俄か雨でさ、俺、悦史さんと出逢った頃のこと、思い出してたんだ。
悦史さんのこの姿見て、欲情もしたけど、なんだか、急に不安になっちまって・・。」
「不安?」
「悦史さんが、ウチのホスト見習いに、『手解き』したのは、俺だけじゃないよね!?」
「・・ああ。口であれこれ説明するより、実地で教えるのが一番手っ取り早いからな。
お前、今でも、気にしてるのか?」
「いえ。そのこと自体は、俺も納得済みだし・・。」
「じゃあ、何だ?」
「・・俺以外に、悦史さんの恋人になりたいって、奴、今までにいなかったのかなって・・。」
「男・限定でか・・?」
悦史さんが、苦笑して尋ねる。
「男でも女でも・・。」
「・・いたよ。だが、もう昔のことだ。」
「訊きたいって、言ったら、怒る?」
「怒ったりはしないよ。ただ、別にそんなに面白い話でもないぜ?」
「俺にとっては、重要問題だよ。」
「そうか・・。元基、俺はな、お前と出逢うまで、もう恋はしないと思っていたよ。」
「?・・それって、どういうこと?」
「俺のほうから、誰かを本気で愛することは、もうないだろうと思い込んでいた。
このホストという仕事を始めてから、尚更、無意識で自分をそう律していたんだ。」
「・・辛い恋、だったんですか・・?」
「・・。」
悦史さんが口を、噤む。
顔はポーカーフェイスを保っているが、指が僅かに震えているのがわかった。
正面から、改めて悦史さんをぎゅっと抱いた。
「俺と、恋、したいって思ってくれただけで、いいよ、悦史さん。」
「元基・・。」
「本心から話したいって、思ったら、その時に、全部、打ち明けてくれればいいから。
過去が気にならない訳じゃないけど、俺には、今、悦史さんと一緒にいられることのほうが、
ずっと大事なことだからさ。」
「・・俺より、お前のほうが、大人なのかもしれないな。」
「俺は、ガキだよ・・。」
「少なくとも、苦い過去を乗り越えようとしてるお前の強さに、俺は憧れるよ。」
「悦史さん、俺、もっと頑張るから!アンタを支えられる人間になりたい・・。」
「一緒に生きて行けるだけで、充分だよ、元基。」
俺を見つめる、悦史さんの瞳に魅せられる。
「・・んっ・・。」
悦史さんの腕が首に巻き付けられ、それ以上、考える間もなく、キスされた。
舌を絡ませているうちに、静まっていた熱が再び、蘇って来る。
それは、俺の腰に擦り付けるように当たる悦史さんのものも、同じことだった。
その先を続けようと、悦史さんの服を、全部脱がせ終えたところで、ドアから音が聞こえて来た。
コンコン・・。
「何時まで、入ってんすか!?お二人さん!」
ノックと共に、外から聞こえてきた声に、驚いて、お互いの身体を離した。
「すまない。もう少し、待っててくれ。まだ開店には間に合うだろ?」
「あと、一時間ぐらいです。あんまり、遅いんで、他の奴らが、様子、見て来てくれって・・。
まさか、中で、エッチでもしてたとか・・?」
「!?・・そんな訳ないっすよ!」
言ってはみたものの、二人で、顔を見合わせ、赤くなった。
ドア越しだから、向こうは気付いてはいないだろうが・・。
「ハハハッ!冗談ですって。急いでお願いします。」
「了解。」
足音の遠退く気配に、ホッと息を吐いた。
「あのまま、してたら、やばかったな・・。さて、これは、どうする?アキラ。」
どちらの股間も、まだ興奮状態だ。
「さすがに、このままじゃ、お客さんの前には出られないよね・・。」
「時間がないのも、わかってるな?」
「して、良いの・・?」
「たぶん、俺がお前を挑発したんだろ?責任は取ってやる。但し、挿れるのは、今は無しだぞ。」
「こんなに、中も蕩けてるのに・・?」
もう一度抱き寄せ、指で、悦史さんの中を探ると、俺を受け入れようと柔らかく絡み付いてくる。
「・・っ・・ぅあ・・それ以上したら、今日はお預け・・。」
「そんな・・!」
「守れたら、店が捌けてから、何も出なくなるぐらい、俺を味合わせてやるよ、元基。」
「悦史さんこそ、寝かさないから、覚悟しといてね。」
「怖いな・・。」
くすくすと笑う悦史さんの唇に、俺の唇を静かに重ねた。
「ん・・。」
唇から、舌を口中に滑り込ませる。
「雨の匂い、するね。」
「お互いにな。」
悦史さんの手が、俺のものに、やわやわと、触れて来る。
「悦史さんがしてくれるの、スゲー、気持ちイイよ・・。俺も、してあげる。」
幹から先端に雫を指で辿っていくと、悦史さんの顔が快感に染まっていくのが、わかった。
「焦らすな・・。」
「ちゃんと、扱いて欲しい?言って・・?悦史さん。」
耳朶を甘噛みし、ぐちゅっと音を立て、幹に指を絡めると、悦史さんが背筋を震わせた。
「・・お前の手で、イカせてくれ・・元基・・。」
俺のものに触れる、悦史さんの体温も上がって、擦る速度が速くなる。
「いいよ。俺も、イキそう・・っ。」
「こうすると、もっと、好くなれる・・。手、貸してみろ。」
悦史さんはそう告げると、俺の指と自分の指を互い違いに絡めて、二人の屹立したものを握った。
「悦史さんのが、ドクドク脈打ってるのが、直に伝わって来るよ・・。」
「お前のも、熱い・・。」
「一緒に動かそうか・・?」
「ああ・・。自分で・・する・・より・・、感じる・・っ!」
お互いの先端から溢れ出る液で、指も手のひらもグチョグチョに濡れている。
自慰なのかセックスなのか、わからない微妙な行為に、却って快感が増す気がする。
俺の手でもあり、悦史さんの手でもある「もの」が、お互いの性感帯を刺激し合う。
「もっと、混ざり合おう・・悦史さん・・。」
「お前と、一つに溶け合いたい・・元基・・。」
握り合う手に力を込めると、悦史さんも強く握り返してきた。
それが合図でもあるかのように、一気に擦り上げた。
身体の奥から、熱い塊が湧き上がるような感覚に襲われる。
「っ・・!イクッ・・悦史・・さん・・。」
「元基・・出るっ・・!」
必死で抑えようとしていたものの、声が零れてしまったのは、同時だった気がする。
お互いのものから噴出した体液が白く、それぞれの身体に飛び散った。
一種の放心状態で、ずるずると、床に座り込む。二人分の荒い息が、バスルームに響いた。
「・・そろそろ、戻らないと、まずいな・・。」
「・・そうだね・・。」
通常のセックスほどの消耗度ではないが、身体を動かすのが億劫だ。
「シャワー、浴びようぜ。」
先に起き上がったのは、悦史さんだった。
「相変わらず、タフだね、悦史さん・・。」
「お前と対等に渡り合うには、これぐらいの体力はいるだろ?」
「・・言えてる!」
「プライベートタイムは、終了だ、アキラ。」
「じゃあ、続きは後で、たっぷり、よろしくお願いします、早乙女さん。」
俺も立ち上がると、シャワーを浴びた。
まだ外は、雨が降り続いているんだろうか?
これからも、恋をし続ける限り、お互いに色々なことを思い、惑うかもしれない。
それも恋の醍醐味だし、迷ったら、また二人で話し合って、抱きしめ合えればいい。
伝えることから、恋は始まるのだから・・。
いつも新鮮な二人でいられたらいいね、悦史さん。
今夜、また新しい悦史さんの一面を、俺は発見出来そうな予感がする。
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