早乙女さんのお話12
-2004バレンタイン掌編-
「lovers' kiss」(上条先輩・視点) by ひいろ
今夜のバレンタイン・イベントに向けて、店内は皆、慌しく動き回ってはいるが、着々と準備が進んでいる。
「アキラ、ちょっと来てくれないか?」
本日のみの、白を基調にした、店内のデコレートがほぼ完了した頃、悦史さんが、急に俺に声を掛けて来た。
一体、何だろう・・?
とりたてて、ここ最近、悦史さん・・こと、早乙女さんに呼び付けられる様なミスは、犯してないはずだ。
「何すか?早乙女さん。」
「まあ、いいから・・。」
疑問に思いながらも、悦史さんに従って、付いて行く。
他のホスト達の目の届かない場所までやってくると、悦史さんは徐にポケットの中から、小さな包みを
取り出すと、封を開け、中のものを口に含んだ。
「?・・悦史さん?」
「シッ・・!黙って、目を閉じろ、元基。」
俺の耳元で、囁かれ、俺は瞼を閉じた。
両肩に悦史さんの手が添えられ、静かに抱き寄せられる。
そっと、悦史さんの唇が、俺の唇に重なった。
「んっ・・。」
重なり合った唇の間から、悦史さんが舌先で俺の唇を擽る。
唇を開き、悦史さんの舌を迎え入れると、悦史さんの口腔の体温で溶け始め、柔らかくなった
チョコレートを、口中に送り込まれた。
お互いの口の中で、一つのチョコレートが、ゆっくりと蕩けていく。
数秒の甘美な時間。
唇を離しても、悦史さんの味の余韻が、残る。
「俺の今日のファースト・キスを、お前にやるよ、元基。」
「俺の今日のファースト・キスも、悦史さんのものだよ。」
お互いから、自然に笑みが零れた。
今夜は、たぶん、一緒には、いられないけど・・今日、初めて交わしたキス。
2月14日。恋人たちにとっては、特別な一日。
大切な人に、愛を込めて・・Happy Valentine。
-end-
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