早乙女さんのお話 19
2006年の早乙女さんのお誕生日祝いは、クリスマス仕様の掌編にしてみました。
私・ひいろの久々の自力更新作品です(苦笑)
短い物語ですが、お楽しみ下さいませ。
「first snow」(悦史さん視点) by ひいろ
夜の街を、華やかなイルミネーションが、彩っている。
この季節は、気忙しいながらも、何処か、色々なものに対して、優しい気持ちになれる気がする。
それは、自分の恋人にも例外ではない。
「早乙女さん、外、雪になってますよ!」
常連客をドアまで見送りに行ったアキラが、どこか楽しそうな口調で、俺の元に駆け込んで来た。
「アキラ・・店の中では、どんなに忙しくても走るなと、普段から、言ってるだろ!?」
「すんません・・。」
デカイ身体のコイツが、俺の言葉に、叱られた犬のように、耳を垂れ、シュンとしょげ返っている。
「まぁ、嬉しい気持ちは、わからなくもないけどな。」
アキラの頭を、ポンポンと宥めるように、軽く手のひらで叩く。
「店に来る途中も、冷え込んでいたから、もしや・・とは思っていたが、やはり降り始めたか・・。」
「初雪っすね・・でも、昨日降ってれば、皆、喜んだろうに・・。」
「ああ・・そうだな。」
天気予報では、昨日のイブから降り始める予定だったのだが、昨日は、この時期にしては珍しく、一度も
曇ることすら無い、冬晴れの一日になった。
寒気は一日遅れで、今日になって、この街まで南下して来たらしい。
「アキラ、お前、今夜のこれからの予定は、どうなってる?」
「今んとこ、今日は、店外の申し込みも入ってないんですけど・・。」
「お前にしては、珍しいな。」
「そういう早乙女さんこそ、どうなんですか?」
「俺も、無いよ。昨日は、流石に凄かったがな。」
今日がクリスマスであっても、日本人には聖夜のほうが大事なようで、昨日と比べると、今夜の客足は少なめだ。
昨日、俺と同じぐらいの店外デートの予約状態だったアキラも、俺に釣られて、苦笑する。
「じゃあ、そのまま、出来るだけ、空けておけよ。」
「?」
疑問顔のアキラだけに、見えるように、ウインクしてやると、その意味を理解したアキラの顔が、綻んだ。
店のドアを開けると、外は、一面の銀世界で、今日は、このまま、積もりそうな降り具合だ。
深々と雪が降る道でも、元基と二人で歩くだけで、なんとなく暖かく感じる。
「昼には、この雪、溶けちまうかなぁ・・?」
「ロマンティックにホワイトクリスマスと言うより、雪だるまでも、作りたそうな顔だな。」
「バレてます?」
「お前は、俺の前だと、感情がすぐ顔に出る。それに、雪の中でも、関係無く、走ってるタイプだからな。」
「・・それって、俺が犬っぽいってこと?」
「実際、さっき、店の中で雪の報告に来た時のお前の顔、相当、嬉しそうだったぞ?」
「年内に雪が降るの、久々だったし・・。」
「お前に、犬耳と尻尾が見えた気がしたぜ?」
「そう言う悦史さんは、猫タイプだよね。こういう日は、早くベッドに潜り込みたい感じ。おまけに低血圧だしね。」
「お前と一緒に、ベッドに入れるほうが、最高に嬉しいけどな。」
「悦史さんが、そう言ってくれるなら、俺も、今日だけは、猫にでもなろうかな・・?」
「二人で、身体を寄せ合って、丸まって眠るのも悪くないな。」
「それだけで、済ませる気・・?」
マンションのドアを閉めた途端、元基に後ろから抱きすくめられた。
コート越しの背中に、元基の体温を感じる。
「・・待てないのか・・?」
「うん。悦史さんが誘ってくれたなら、やっぱ、お応えしないと・・。」
「誘って・・なん・・か・・んぅ・・。」
「無いって言うの?さっき、一緒にベッドに・・って言ったじゃん。言葉より、身体のほうが、素直だね。」
キスと一緒に、柔らかく身体に触れられ、少しずつ、俺の性感も高まっていく。
「・・元基、もっと俺を温めてくれよ。」
「いいよ。冬でも逆上せそうなぐらい、愛してあげる。」
元基の熱い囁きと狂おしいほどに激しい愛撫が、身体と心の全てを満たした。
心地良い眠りから目覚めても、街並みは雪化粧のままだ。
「雪だるまは無理そうだが、今日、出勤前に、一緒に、教会に行かないか?元基。」
「教会?」
「二人で、静かに祈るクリスマスもいいだろ?」
「そうだね・・行ってみようか、悦史さん。」
聖夜を過ぎた、昼間の小さな教会は、意外なほど、静かだった。
それでも、室内は、神聖な空気に満ちている。
「或る国では、同性同士の結婚も許されるように、なったらしい・・この国も、いつか、そうなると、いいな。」
「悦史さん、そうなったら、俺と結婚してくれる?」
「ああ・・俺が一生、共にいたいのは、お前だけだ。」
「俺もだよ、悦史さん。」
二人きりのこの場所で、静かに誓い合う。
merry christmas and happy new year.
一年の終わりと始まり。
これからも、お前と一緒に、ずっと過ごせるなら、どんなプレゼントよりも、幸せかもしれない。
-end-
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