『薔薇ノ木ニ薔薇ノ花咲ク』 抱月×幹彦? SS(2003.3.9.up)
ゲームの攻略を始めて、まだ20日ほどですが、抱月先生の幹彦さんへの、複雑で切ない思いに、
どうしてもSSが書いてみたくなりました。
かなりのネタバレになっていますので、攻略前の方は、ご注意下さい。
ゲームの要君中心のラブストーリーがお好きな方、ごめんなさい(苦笑)
凌辱ルートの、「要君の進学エンド」に至る前の設定にしてみました。
本当に、報われないからこそ、より哀しい物語だとは、思うんですが、抱月先生の献身的とも言える、
幹彦さんと要君に対する『愛情』に、少しぐらいは、ご褒美があっても良いかなと・・。
ちょっとだけ、いつもの私のSSとは、↓、フォントも変えてます。
「下弦の月」 by ひいろ
もうすぐ幹彦との再会から、半年が経とうとしている。
この桜・・(いや、今は薔薇と言った方が正しいな・・)の樹の前で、要君と出会ったことが、
まさか再会のきっかけになるとは、考えもしなかった。
そしてそれが、三人の奇妙な関係の始まりになることも・・。
この場所で、要君に『花喰ヒ鳥』と名乗ったのは、ちょっとした悪戯心からだった。
処女作の小説にあった状況を、ただ真似てみただけだったのだが、この名を口にした瞬間の、
要君の驚いた表情を、今でもよく覚えている。
彼の身の上に起こった事件の詳細を、要君と逢う度、聞かされる程に、心の中には、或る一人の
人物像が、思い浮かんだ。
学生時代の、友人でもあり、初めて恋心を抱いた相手、月村幹彦。
尤も、その初恋は、あくまで片恋に過ぎなかったのだが・・。
初めての口付けの思い出だけの、たった三日で終わった恋。
淡い想いは、彼の言葉によって、見事なまでに打ち砕かれてしまった。
それでも、寮の部屋で毎日顔を合わせる、彼のことがすぐには諦めることは出来ず、その後も
何かにつけ、彼に関わり続けることを望んだ。
学生時代から、既に物書きになりたいと、思い始めていた。
『花喰ヒ鳥』とは、その当時、彼に半ば無理を言って、書かせた文集の詩での彼の二つ名だった。
たまたま目にした帯の文様から、彼自身が名付けたものだ。
その名に反応した要君を見て、複雑な気持ちになった。
彼が母校でもある、この学校の生物学の教授になっていたことは、青天の霹靂だった。
かつて、初めて出逢った、この樹の前での事件。
過去、引き起こされた、彼の関わる、或る二つの出来事をを彷彿とさせる、既視感とも呼べる、
奇妙な符号の数々。
幹彦を、この事件の犯人かもしれないと推察することが可能になってしまっても、我ながら、
あまり大きな驚きは感じなかった。
ただ一つ、彼の要君に対する執着を除いては・・。
この薔薇の絡む桜の樹は、幹彦の教授室の窓から見える位置にあり、秘密裏に進めていたはずの、
要君の「密会」は、彼にはお見通しだったようだ。
望まざる再会でも、幹彦が昔と変わらず、僕を英語名の「レイフ」と呼んだことは、この場所とも
相まって、過去の苦い記憶を、呼び覚ますことにもなった。
要君のことを想い、幹彦は事件を口外しないよう、そして共犯者にするため、要君の身体を
使って誘い込むことを選んだ。
心に深い傷を負った愛する人を何故、他人の手によって更に凌辱させるのか、その時の彼の心情は、
彼自身にしか、わからないものだったが、
「誰よりも愛している。」
「彼のためだ。」
と告白した、誰にも何物にも執着したことのなかった、幹彦の言う言葉を、信じるしかなかった。
それが、あの事件後も、たった一つ縋れる、幹彦の期待に応えたくて、必死に生きようとしている、
要君のために、僕が出来る唯一のことだった。
午後の日差しは、この部屋には差し込まないようで、ここの空気は、ひんやりとしている。
「幹彦。」
また、幹彦は、窓辺から、今日もあの薔薇を眺めている。
「何ですか?レイフ」
呼びかけに、口に咥えた煙草を灰皿に置き、俺のほうに向き直った。
「お前からも、ご褒美、欲しいな・・。」
「要君だけでは、物足りないんですか?」
「いや、そう言う訳じゃない。でも、お前が僕をこのことに巻き込んだのは、僕が昔、お前に
抱いていた思いを知っていたからでもあるんだろう?」
「まぁ、君が要君と出会うことになったのは、ある種の運命だったかもしれませんね。」
「お前は、僕との再会は、不本意だったのか?」
「いいえ。今では充分、有意義だったと思っていますよ。
君以外に、私の計画のこれ以上の協力者は、きっと望めなかったでしょうから。」
「口付けても、いいか・・?」
「したいのなら、どうぞ。」
「相変わらず、要君以外には、素っ気無いんだな・・。」
あの学生時代の初めてのキッスの時は、同じ言葉が、許しの言葉だと感じられていた。
本当は、幹彦本人は、その時、何も感じていなかったし、僕が望んだことだったから、
させてくれたに過ぎなかったのだが・・。
苦笑して、肩を抱き寄せ、彼の薄い唇に口付ける。
「ん・・っ。」
舌を絡めると、彼の煙草の独特の味がした。
静かに唇を離す。
「この煙草の香りは・・。」
「ただの遊びですよ。」
仕事の参考にと、一度俺も試したことのある、或る効果のある煙草だった。
「過ぎると、身を滅ぼすぞ。」
「ご忠告には感謝しますが、もうやめられませんから。」
享楽に溺れる筈のない彼が、何故、この煙草を愛飲しているのか、再会した頃に比べて、一段と
痩せてしまった身体つきを見れば、一目瞭然だった。
元々細身だったが、この数ヶ月で、筋肉がかなり落ちているようだ。
「医者の不養生って言葉、知ってるよな?」
「ええ。私も元医者ですから、自分の体のことは、自分が一番わかっていますよ。」
「そうか・・。」
それ以上は、何も言えなくなった。
答えた彼が、要君を愛するようになってからの幹彦らしい、意志の強い瞳をしていたからだ。
「続き、どうしますか?」
「したいって言っても、最後までは、させてくれないんだろ?」
「そうですね。私の五感は、全て要君のものですから。」
「僕も、要君を哀しませるのは、嫌だしね。でも、これだけは遂げさせて欲しいんだけど・・。」
口付けで興奮してしまった、僕の着流し越しの指差したそこを、幹彦が見つめた。
「仕方ないですね・・手で良いですか?」
「ああ。かまわない。幹彦の手で、して欲しい・・。」
「・・っ・・んぅ・・。」
幹彦の痩せた手が、袷から侵入して、僕のものを愛撫し始めた。
「口付けだけで、こんなになってしまったんですか・・。」
囁いて、先端から溢れ出すものを塗り込めるように、指先と手のひらで擦られる。
要君を喜ばせるための巧みな技巧が、僕の意識を翻弄していく。
「あ・・っあ・・ふ・・。」
たとえ最早、幹彦の全てが要君のものだとしても、今、この瞬間を彼と共有出来ることは、
何物にも変えがたい喜びだった。
「・・!もう・・出る・・幹・・彦・・。」
「出して良いですよ、レイフ。」
その刹那、幹彦が俺に向けて、微笑を浮かべてくれた気がした。
「ああ・・っ・・!」
あっという間に、幹彦の手に放出していた。
コンコン。
「月村先生、お邪魔します。」
声は、要君のものだった。
快感で弱冠、放心状態に近かったが、その声に慌てて、肌蹴た着流しの裾を合わせる。
幹彦の方はと言うと、濡れた手はしっかりとハンカチで拭き取り、清ました顔で応対した。
「どうぞ、要君。」
「はい。」
ガチャリと開かれたドアから、
「あれ?二人きりで、何していたんですか?先生方。」
窓を締め切った教授室に漂う、微妙な匂いに、要君が不思議そうな顔をする。
「え?いや、別に・・。」
お茶を濁そうとした俺に対して、
「レイフに、おねだりされたので、気持ち良くして差し上げました。」
「お、おいっ!」
慌てふためくが、幹彦の言葉を聞いた途端に、要君の二人への視線が、剣呑としたものになる。
「そう・・ですか。」
・・声も、冷淡になってしまった。
「そうです、要君。私たちに、嘘は無しのはずですよね。隠し事は、色々あったとしても。」
「事実は事実として、受け入れます。僕達の秘密に、水川先生を巻き込んでしまいましたし、
それぐらいは、我慢しなくては・・。ただ、後で、お二人には、たっぷり奉仕して頂くことに
なりますが、宜しいでしょうか?」
要君が、怒りに目を輝かせつつ、にっこり微笑んだ。
半年前、幹彦が彼に与えた試練の成果は、今や見事に花開いている。
草木を愛し、のんびりと生きていた優しい青年は、見かけは変わっていないが、すっかり精神的に
打たれ強い逞しさすら、感じさせるまでに成長した。
桜の養分を取り込んでしまった、あの薔薇のように。
あれから、三人で、『花喰ヒ鳥』事件に深く関わった、全ての人間の口封じを行った。
良心の二文字は、幹彦と再会してしまった時点で、既に何処かに置いて来てしまった。
僕も、要君も、幹彦を愛したからこそ、この道の選択に悔いはない。
この先、何かのきっかけで、このことが発覚し、どんなに他人の誹謗中傷を浴びようとも・・。
仕事を終え、夜更けに、家を抜け出し、薔薇の前に立った。
空には、冴えた光を放つ月が、静かに輝き、蔦薔薇を妖しく照らしている。
過去、現在、未来、それぞれの時間を邂逅し空想して、そっと目を閉じた。
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